第5回デザインのよもやまばなし「ブランドをデザインする(前編)」
デザインのよもやまばなしでは、「デザインのよもやまメールマガジン」で配信した内容について、図やイメージを使ってより詳しく説明するページとなっています。
こんにちは、熊本県産業技術センターデザイン担当の石橋です。
デザインのよもやまメールマガジンを読んでいただきありがとうございます。
皆さんは「ブランド」と聞いてどんなことを思い浮かべるでしょうか?洋服や鞄、時計などの高級品といったいわゆるブランド物をイメージする人が多いのではないでしょうか。もしくは、希少性の高い肉や魚、野菜などにオリジナルの名前をつけた、いわゆるブランド牛やブランド野菜などをイメージした人もいるでしょう。でも、ブランドとは本来そういった高級品や希少品だけを表す言葉ではありません。ブランドの意味や役割を理解し活用することができれば、会社の価値を大きく高め、事業全体に良い循環を与えることができます。
前回は、「ブランドとは何か?」ということで、ブランドとは会社や商品に「〇〇と言えば●●だよね」というイメージを持たせることつまりは差別化することであるという話をしました。
そこで今回は、「ブランドをデザインする(前編)」をテーマに、自分たちの会社や商品のブランドをデザインするために、具体的にどういう考え方やプロセスが必要かについてお話していきたいと思います。
■ブランドはロゴやパッケージだけでは伝わらない
会社や商品のブランドをつくりたいが、何から始めればいいかわからないという相談をよく受けます。また、とりあえずロゴマークやブランドカラーを作ったり、商品のパッケージデザインを揃えてみたりと取り組んではみたものの、あまり効果が感じられないという意見を聞くこともあります。
確かにロゴマークやブランドカラー、パッケージといった外観を揃えることで、共通した印象を与えることは可能です。ですがそれだけでは、「〇〇と言えば●●だよね」というイメージを持たせることは出来ません。ブランディングでは、他社との違いや、どんな想い・意思でものづくりをしているのかといった背景にあるストーリーを伝える必要があります。それが伝わってはじめて、ブランドへの共感や拡散につながっていきます。
■Whyからはじめよう
ブランドに不可欠なストーリーを伝えるためには、なぜその事業をやろうと思ったのか?どんな想いや考えを持って取り組んでいるのか?といった「Why(なぜそれをやるのか、意思)」が必要です。そこには、経営トップや事業の責任者の熱い想いが欠かせません。またブランドはユーザーやお客様に向けてのものだけではありません。共に働く従業員にとっても、自分たちが誰の何のために日々働いているのか。世の中にどう貢献しているのかを示すものでもあり、仕事へのモチベーションや働く姿勢にもつながっていく大切な要素です。
ですので、まずは経営トップや事業の責任者が、会社や事業の歴史や経緯、自分たちの気持ちをしっかりと掘り下げて、その根っこにある「想い」を明確にすることから始めましょう。このときのポイントとして、どうしても綺麗な耳障りのいい言葉でまとめようとしてしまいがちですが、そうするとどこにでもあるスローガンのようになってしまいます。はじめは自分の気持ちを素直に表現することが大事です。「自分はこうなりたい」、「こうだったらいいな」からはじめて、内外の環境要素を加えながら、社内の人や外部の人が聞いてもいいねと思ってもらえる言葉で表現していけばいいと思います。
■本当の強みは何か
ブランドに説得力や信頼感を与えるために有効なのは「強み」です。強みについては、皆さんも過去に一度は考えたことがある方も多いのではないでしょうか。ただ、ここで大事なのは、ホームページやパンフレットに書かれている強みは、他社にはないあなたの会社だけの強みになっているかということです。よくある「高品質、短納期、柔軟な対応力」などは、程度の違いはありますが多くの企業がうたっている言葉であり、強みとしての役割は果たしていません。本当の強みとは、他社と比較してもその違いがはっきりとわかる、自社にしかない独自の技術や圧倒的なアドバンテージとして表現されている必要があります。そのためにも、一度自社の強みと思われる要素を書き出し、競合する他社と比較した上で、他社に負けない強みを探してみてください。たくさんある必要はありません、1つでも本当の強みが見つかれば、それをどう活かすか考えることが、強いブランドへとつながっていきます。
■自社を取り巻く環境をリサーチする
強みを知ることで自社への理解を深めたら、外部の環境についても知る必要があります。まずは競合について、強みや特徴、商品構成、ターゲットなどについて調べます。市場の動向や社会の動きなど、関連する業界だけでなく、広い視点で調べておくと後で自社のポジショニングを考える際などに役に立ちます。また、世の中の価値観の変化について把握しておくことも重要です。特にブランディングでは、自社のブランドに共感しファンになってもらうことが目標のひとつですので、ターゲットとなるユーザーがどんなことに関心があるのか、何を大切に思っているのかを知っておく必要があります。
以上、今回はブランドをデザインするために、はじめに取り組んでいただきたい内容として3つのブランド要素①Why(意思)、②強み、③環境についてご紹介しました。
このときのポイントとして①Why(意思)、②強みについては、自社に対する固定観念からどうしても偏った意見になりがちです。検討を進める際には、社内のメンバーだけなく外部のアドバイザーを入れて議論することをお勧めします。客観的な視点を入れることで、これまで気づかなかった事業に対する想いや自社の強みの発見に繋がる可能性があります。
最後に、ブランドは長い時間をかけてじっくり育てていくものですので、表面的なデザインよりもその中身が非常に大切です。自分自身や会社の過去・現在・未来を見据えて、納得いくまでじっくりと検討してみてください。また、一度で完成としてしまわずに、定期的に見直してブラッシュアップしていくことも重要です。
次回は、「ブランドをデザインする(後編)」として、3つのブランド要素をもとにブランドの核となる部分やブランドの伝え方などについてお話ししていこうと思います。
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